フランコフォニー(フランス語圏)についての基礎・基本情報のまとめ。以下、おもに次の流れでふれていく。
- フランコフォンと2つのフランコフォニーなど用語の定義
- ヨーロッパのフランコフォニー
- アフリカのフランコフォニー
- アメリカ・カリブのフランコフォニー
- アジア・オセアニアのフランコフォニー
フランコフォンとフランコフォニーの違い
フランコフォンとはフランス語話者、つまり人々を指す。フランコフォニー(francophonie)はフランス語圏、つまり地域を指す。
また、地域のフランコフォニーという言葉には、一般的な「フランス語圏(francophonie)」という意味と、フランコフォニー国際機関(OIF)の2つの違いがある。
つまり、全部で3つの似たような言葉がある。

フランコフォフォフォ…どっちがどっち?もうフラフラにゃあ
よって、ここでは、便宜上、フランコフォン、フランコフォニ(フランス語圏)、フランコフォニー(国際機関OIFの略称)の3つに分類して、それぞれの違いについてふれておく。
フランコフォン(francophone)
フランス語話者(francophone)フランコフォン

フランコフォン(francophone)とは、フランスを話す人のこと。フランス語の話者(わしゃ)。
フランス語圏(francophonie)
フランス語圏(francophonie)フランコフォニ*
フランコフォニ*とはフランス語圏のこと。フランス語圏全体を含む地理的な概念である。(フランス語圏全体の地図は、次のフランコフォニー国際機関の項を参照。)
francophonie(フランス語圏)
1880年にフランスの地理学者であるオネジム・ルクリュが命名。フランス語の話者(francophone、フランコフォン)の人々で構成される「フランス語圏」とほぼ同じ意味。 フランス共和国を含め、フランス語が何らかの形で用いられている国・地域の総称。
(※日本を含むかどうかは諸説あり。)
*また、当サイトではフランコフォニと表記している場合もあるが詳しくは注釈を参照。
フランコフォニ― 国際機関(OIF)

Francophonie(国際機関)フランコフォニー国際機関(フランス語:Organisation Internationale de la Francophonie, OIF)の通称。
なお、厳密には「フランコフォニー国際機関の加盟国=フランス語圏」ではない。

フランコフォニー国際機関とは、正式名称をフランス語で「Organisation Internationale de la Francophonie(OIF)」という国際機関。
日本語では、国際フランコフォニー機構、仏語圏(フランコフォニー)国際機関ともよばれる。
2018年時点で、84の国・地域が参加。内訳は、加盟国54、準加盟国4、オブザーバー26(資格停止中1)となっている。
なお、フランコフォニー国際機関に加盟している国・地域はフランス語圏に限定されていない。英語圏やポルトガル語圏(カーボヴェルデやサントメ・プリンシペ)、アラビア語圏(チュニジアやモロッコなど)の国も参加している。
このため、「フランコフォニー国際機関加盟国」=「フランス語圏」とは必ずしも言い切れないとのこと。
(備考)francophonieはフランコフォニー?フランコフォニ*?
注釈:フランコフォニー(フランコフォニ)の使いわけについて(私見)
※結論からいえば、フランコフォニ―という表記が一般的である。ここでは便宜上、フランス語圏をフランコフォニ、国際機関をフランコフォニ―と使い分けを試みている。これは定まったものではない。
※使い分けの理由:やや専門的な話になる。OIFの日本語名称がやや幅がある。このためここでは「フランコフォニ―」としてまとめている。例:1)仏語圏国際機関(OIF)仏語圏(フランコフォニー)国際機関(OIF)(外務省)、2)国際フランコフォニ―機構(在日フランス大使館)、3)フランコフォニ―国際機関(ウィキペディア)。これらいずれもフランコフォニ―というカタカナ表記は同じなので、最小公倍数としてフランコフォニ―を抽出。なお、フランス語の原文では、正式名称は、OIF: Organisation Internationale de la Francophonie。日常的にはFrancohpnieというOIFの略称も仏語圏でよく用いられている。
一方、フランス語圏のカタカナ表記は、あくまで個人的な便宜上の使いわけ。国際機関をわざわざ使い分ける必要がなければ、フランコフォニ―という表記でまとめてしまえばよいと思う。例えば、ここでの紹介のように、広義のフランス語圏というfrancophonieと国際機関のFrancophonieについて使い分けたいとき、カタカナ表記を書きわけると少しわかりやすいかとも思った次第。
ヨーロッパ(欧州)のフランコフォニー
(1)フランス語を公用語とする国
- フランス 63,213,894(1位)
- ベルギー 10,364,388(11位)
- スイス 7,489,370 (18位)
- ルクセンブルク 468,571 (26位)
- モナコ 32,409 (29位)
国名 人口(人口順 /フランス語公用語とする国々:全29カ国)
(2)フランス語が国語・共通語・公用語の地位にある国・地域
- フランス(公用語)
- ベルギー(オランダ語、フランス語、ドイツ語が公用語)
- スイス(ドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語が公用語)
- モナコ(公用語)
- ルクセンブルク(公用語、国語はルクセンブルク語。ドイツ語も公用語)
- ヴァッレ・ダオスタ州(イタリア北西部の特別自治州。イタリア語とフランス語が公用語)
- ガーンジー(イギリス王室領。英語とフランス語が公用語)
- ジャージー(イギリス王室領。英語とフランス語が公用語)
(3)フランコフォニー国際機関加盟国等
(西欧)
- Andorra アンドラ公国(Principat d’Andorra)
- Austria オーストリア共和国(République d’Autriche)オブザーバー
- Belgium ベルギーベルギー王国(Royaume de Belgique)(ワロン地域フランス語ワロン=ブリュッセル共同体地域がベルギー連邦政府とは別個に参加)
- Cyprus キプロス共和国(Κυπριακή Δημοκρατία)準加盟国(イギリス連邦にも参加)
- France フランス共和国(République française)
- Greece ギリシャ共和国(Ελληνική Δημοκρατία)
- Luxembourg ルクセンブルク大公国(Grand-Duché de Luxembourg)
- Monaco モナコ公国(Principauté de Monaco)
- Switzerland スイス連邦(Confédération Suisse)
中東欧
- アラブ首長国連邦(オブザーバー)
- アルバニア
- アルメニア
- ボスニア・ヘルツェゴビナ(オブザーバー)
- ブルガリア
- カタール(準加盟国)
- コソボ(オブザーバー)
- クロアチア(オブザーバー)
- エストニア(オブザーバー)
- ジョージア
- ハンガリー(オブザーバー)
- ラトビア(オブザーバー)
- リトアニア(オブザーバー)
- レバノン(公用語にはなっていない。準公用語的扱いで広く通用。アラビア語が公用語)
- 北マケドニア
- モルドバ
- モンテネグロ(オブザーバー)
- ポーランド(オブザーバー)
- チェコ(オブザーバー)
- ルーマニア
- セルビア(オブザーバー)
- スロバキア(オブザーバー)
- スロベニア(オブザーバー)
- ウクライナ(オブザーバー)
アフリカのフランコフォニー(まとめ)

アフリカで、フランス語が公用語として話されている国の数は23カ国。
うちフランス語を話す人口(フランコフォニ)は、アフリカ全体で約9453万6千人(94,536,000人)。
(1)フランス語を公用語とする国
- コンゴ民主共和国 60,764,490 (2位)
- マダガスカル 18,040,341(4位)
- コートジボワール 17,298,040(5位)
- カメルーン 16,322,000(6位)
- ブルキナファソ 13,491,736(7位)
- ニジェール 12,162,856(8位)
- セネガル 11,706,498(9位)
- マリ 11,415,261(10位)
- チャド 9,657,069(12位)
- ギニア 9,452,670(13位)
- ルワンダ 8,440,820(14位)
- ハイチ 8,121,622(15位)
ブルンジの旗 ブルンジ 7,795,426
ベナンの旗 ベナン 7,649,360
(2)フランス語が国語・共通語・公用語の地位にある国・地域
- ガボン(公用語)
- カメルーン(公用語、他に英語も公用語)
- ギニア(公用語、主要言語は、マリンケ語・プル語・スス語)
- コートジボワール(公用語)
- コモロ(公用語、他にアラビア語、コモロ語も公用語)
- コンゴ共和国(公用語、主要言語は、リンガラ語・ムヌクツバ語)
- コンゴ民主共和国(公用語、主要言語は、コンゴ語・リンガラ語・ルバ・カサイ語・コンゴ・スワヒリ語)
- ジブチ(公用語、他にアラビア語も公用語)
- セーシェル(公用語、他に英語も公用語)
- セネガル(公用語、主要言語は、ウォロフ語・ジョラ語・セレール語・ソニンケ語・プル語・マリンケ語・マンディンカ語)
- チャド(公用語、他にアラビア語も公用語)
- トーゴ(公用語、主要言語は、エウェ語・カビイェ語)
- ニジェール(公用語、主要言語は、ハウサ語・ザルマ語・タマジャク語・フルフルデ語・カヌリ語・アラビア語・ツブ語(英語版)(ダザガ語、テダ語(英語版))・ゴウルマンチェマ語(英語版)・ブドゥマ語(フランス語版)・タサワク語)
- ブルキナファソ(公用語、主要言語は、モオレ語・フルフルデ語・ジュラ語・ゴウルマンチェマ語(英語版)・ブヮム語(英語版)・ダガリ語・サモ諸語(英語版)・ロビ語(英語版)・リエレ語(英語版)・セヌフォ語)
- ブルンジ(公用語、主要言語は、ルンディ語)
- ベナン(公用語)
- マダガスカル(公用語、他にマダガスカル語も公用語)
- マリ(公用語、主要言語は、バンバラ語・フルフルデ語・ドゴン語(英語版)・ソニンケ語・マニンカカン語・ザルマ語・ママラ語(英語版)・タマシェク語・シェナラ語(英語版)・ボム語(英語版)・ボゾ語(英語版)・ハアソンガハンノ語(英語版)・ハッサニア語・ソンガイ語・ソノイ語・タマサイット語・ドゴソ語・バマナンカン語)
- モーリシャス(公用語、他に英語も公用語)
- ルワンダ(公用語)(他にルワンダ語・英語も公用語)
- 中央アフリカ(公用語、主要言語は、サンゴ語)
- 赤道ギニア(第二公用語、スペイン語が第一公用語、ポルトガル語が第三公用語)
- マヨット(公用語、フランス自治領)
- レユニオン(公用語、フランス海外県)
- モーリタニア(公用語にはなっていない。準公用語的扱いで広く通用。アラビア語が公用語)
- アルジェリア(公用語にはなっていない。準公用語的扱いで広く通用。アラビア語が公用語)
- チュニジア(公用語にはなっていない。準公用語的扱いで広く通用。アラビア語が公用語)
- モロッコ(公用語にはなっていない。準公用語的扱いで広く通用。アラビア語とベルベル語が公用語)
(3)フランコフォニー国際機関加盟国等
- ベナン(旧フランス領西アフリカ)
- ブルキナファソ(旧フランス領西アフリカ)
- ブルンジ
- カメルーン – イギリス連邦にも参加
- カーボベルデ
- 中央アフリカ(旧フランス領赤道アフリカ)
- コモロ(旧フランス領西アフリカ)
- コンゴ共和国(旧フランス領赤道アフリカ)
- コンゴ民主共和国
- コートジボワール(旧フランス領西アフリカ)
- ジブチ(旧フランス領アファル・イッサ)
- エジプト
- ガボン(旧フランス領赤道アフリカ)
- ガーナ(準加盟国) – イギリス連邦にも参加
- ギニア(旧フランス領西アフリカ)
- ギニアビサウ
- 赤道ギニア(第一公用語スペイン語、第二公用語フランス語)
- マダガスカル(旧フランス領マダガスカル)
- マリ(旧フランス領西アフリカ)
- モロッコ(旧フランス保護領モロッコ)
- モーリシャス – イギリス連邦にも参加
- モーリタニア(旧フランス領西アフリカ)
- モザンビーク(オブザーバー) – イギリス連邦にも参加
- ニジェール(旧フランス領西アフリカ)
- ルワンダ – イギリス連邦にも参加
- サントメ・プリンシペ(公用語ポルトガル語)
- セネガル(旧フランス領西アフリカ)
- セーシェル – イギリス連邦にも参加
- チャド(旧フランス領赤道アフリカ)
- トーゴ(旧フランス領トーゴランド)
- チュニジア(旧フランス保護領チュニジア)
アメリカやカリブのフランコフォニー
アメリカ・カリブ・中南米のフランコフォニー
(1)フランス語を公用語とする国
(北米)
- カナダの旗 カナダ(英語とフランス語が公用語。ケベック州の唯一の公用語。ニューブランズウィック州とユーコン準州は、英語とフランス語が公用語。ノースウェスト準州は、英語とフランス語ならびにイヌクティトゥット語やクリー語などの先住民言語が公用語)
- サンピエール・ミクロン(公用語、フランス自治領)
(カリブ)
- ハイチ(ハイチ語とフランス語が公用語)
- グアドループ(公用語、フランス自治領)
- サン・マルタン(フランス自治領)
- サン・バルテルミー(フランス自治領)
- マルティニーク(フランス自治領)
(中南米)
- フランス領ギアナ(フランス海外県)
(2)フランス語が国語・共通語・公用語の地位にある国・地域
- ルイジアナ州の旗 ルイジアナ州(アメリカ合衆国の州。法的な公用語の指定はない。事実上、英語とフランス語)
サンピエール・ミクロンの旗 サンピエール・ミクロン(公用語、フランス自治領)
(3)フランコフォニー国際機関加盟国等
- アルゼンチン(オブザーバー)
- カナダ(うちケベック州ケベック州、ニューブランズウィック州ニューブランズウィック州、オンタリオ州オンタリオ州(オブザーバー)はカナダ連邦政府とは別個に参加) – イギリス連邦にも参加
- コスタリカ(オブザーバー)
- ドミニカ共和国(オブザーバー)
- ドミニカ国 – イギリス連邦にも参加
- ハイチ
- メキシコ(オブザーバー)
- セントルシア – イギリス連邦にも参加
- ウルグアイ(オブザーバー)
アジア・オセアニアのフランコフォニー
アジア、大洋州などのフランコフォニー
(1)フランス語を公用語とする国
- バヌアツ(公用語)(他にビスラマ語・英語も公用語)
(2)フランス語が国語・共通語・公用語の地位にある国・地域
- バヌアツ(公用語)(他にビスラマ語・英語も公用語)
- ニューカレドニア(公用語、フランス自治領)
- フランス領ポリネシア(公用語、他にタヒチ語も公用語。フランス自治領)
- ウォリス・フツナ(フランス自治領)
(3)フランコフォニー
(アジア)
- カンボジア(旧フランス領インドシナ連邦)
- 韓国(オブザーバー)
- ラオス(旧フランス領インドシナ連邦)
- タイ(オブザーバー、資格停止中)
- ベトナム(旧フランス領インドシナ連邦)
(オセアニア)
- ニューカレドニア(準加盟国)
- バヌアツ
まとめ
ここでは以下の項目について基本的なことをまとめた。
- フランコフォンと2つのフランコフォニーなど用語の定義
- ヨーロッパのフランコフォニー
- アフリカのフランコフォニー
- アメリカ・カリブのフランコフォニー
- アジア・オセアニアのフランコフォニー
なお、各項目については必要に応じて、別稿で掘り下げることとしたい。
以上、何かのご参考になれば幸いである。
(参考)ウィキペディア、フランス語を公用語としている国の一覧、フランス語圏、フランコフォニー国際機関、他
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